「青い空、広がる雲、真っ青な水!やっぱり休暇は海で過ごすのに限るぜ!

 まだサクラが咲き誇るこの季節に、ブラスタ国傭兵団の一人クレス:ミリオンは半袖で

 元気よく白浜を駆け回る。

 「はぁ、アンタ馬鹿?まだ春だってのに半袖+その元気のよさ・・。ホントに子供なんだから」

 ため息と共に小さな呟きを漏らす少女フォル:レイナスもまたブラスタ国傭兵団の一員である。

 彼女はクレスとはうって変わり、普段着用している紅色マントを羽織い、暖かさを保っている。

 二人は先のグランスライオン討伐成功による’特別休暇’を利用し、ブラスタ国西に広がる

 スカール海岸へとハネをのばしに来ていた。

 「別にいいじゃんかょ。お前もたまには馬鹿になったほうがいいぞ」

 クレスはムッとしてフォルを見やる。

 「スピードスターがこんなんでいいのかしら・・・。私は木陰で読書でもしてるわ」


 完全に呆れたフォルは近くの木へと歩を進め、ドカっと腰を下ろす。

 「あ、そうだ。釣りやろ〜と♪」

 もはや独り言となっているわけだが、クレスはさほど気にして風も無く自分の荷物から道具を取り出す。

 「ヨーシ、昼ご飯はフィッシュ&フィッシュで決まりだ〜!」

 彼の言うフィッシュ&フィッシュとは彼の生まれた村の伝統料理で大きな魚のなかに


 それより小さい魚を詰め、その小さい魚に更に小さい魚を詰めていくという奇抜な

 アイデアの料理である。

 「ふぅ、ホント馬鹿・・」

 視線を本からクレスへと移したフォルは、傭兵団砦にいるときと今のクレスとの変わりように

 呆れる事しかできなかった。(砦はマジメに過す場所なんだよ。だから性格変えな
いとな(クレス談


 ****同刻:クルックの森****

 「フム、グランスライオンの’合成’は失敗だったようだな」

 グランスライオンの亡骸の近くにたたずむ男は独り言を呟く。彼の容姿はあきらか
に異質で

 上から下まで黒一色。怪しいとしか言い様がナイ。

 「とりあえず’コア’は無事のようだな」

 彼はグランスライオンの亡骸に手を入れる。そして紅の宝玉、国で言う’LED’を取り出す。

 あまりゾッとしない光景である。

 「ククク、これさえあれば・・・」

 男は高笑いをしながらその場から去り行く。


 ****スカール海岸****

 「ぉぉ、キタキタ〜!!」

 今までアタリの一つさえしなかったクレスの持つ竿が一気に撓る。

 「ムムゥ、これはかなりの大物だ!」

 (五月蝿いわね・・。少しは私みたいに静かにできないのかしら・・)

 フォルはチラリとクレスを見る。その目が見開かれるのにソウ時間はかからなかった。


 その瞳に写るのは大海原にのなかに写る巨大なカプセルのようなものであった。

 「って、それ魚じゃないわよ!」

 「え”!?」

 「緊急用海上離脱船アパス君よ」

 「きんきゅうようかいじょーりだつせん?」

 戦闘時の1/10も頭の回らないクレスにフォルは、苛立ちを覚えたが簡単に説明する。


 「簡単に言えば’助けを求める小さな船’ってことょ」

 「ってことは人が乗ってたりするのか?」

 少しは理解できたのか、彼は眉間に皺をよせる。

 「まぁ大体はそうね。たまに漂流中のアパス君をシストが乗っ取ってました、ってのもあるわね」

 その言葉にクレスは瞼をピクっと動かすが、直ぐにアバス君引き上げ作業に入る。

 「クソ重たいな・・」

 (ていうかフォル手伝えよ・・。)

 説明だけの少女を睨みながら一人、釣竿を手に引き上げに奮闘するクレスであった。



 ****同刻 クロスの部屋****

 (ヤハリ、グランスライオンは進化していたのか?ぃや、それはありえない。たった3ヶ月という短期間でそれは不可能。しかしソレ以外には説明がつかない・・。)

 先のグランスライオン討伐の報告書を見ながら、傭兵団隊長クロス:アルバードは深く思考する。

 (・・・いや、まだ他にも方法はある!)

 深い思考の末に答えがでたのか、報告書を持っていた彼の手がフルフルと震える。

 (しかし奴は10年前に・・・)


 ****スカール海岸****

 「いやぁ、ホント助かったでござるょ♪」

 どうにかアバス君を引き上げたクレスは口をへの字に曲げる。それもそのはず、アパス君が

 急に開き、その中から黒装束をまとった20代後半と見える一人の男がでてきたのである。

 「拙者は草薙(くさなぎ)真(しん)と申す者でござる。おふた方は?」

 「ぁ、ぃゃ、ぅん。俺はクレス:ミリオン。んでこっちはフォル:レイナス」

 どうにか我に返ったクレスは一応自己紹介をする。

 「ぉぉ、クレス殿にフォル殿でござるか。二人とも珍妙な名でござる」

 どちらかと言うとこの男の方が珍妙なわけだが、あえて二人は突っ込まなかった。

 「・・で、草薙さんは何処からいらしたんで?」

 この男のペースに引き込まれていたフォルは、やっと口を開く。

 「拙者はメルティの里という忍里からこの地に流れついたのでござる。実はお恥ずかしい話
 なのだが掟を破って里から追放され、アバス流しにされたのでござる。」

 草薙は何故か照れながら頭をかく。

 「掟って?」

 「フム、普通は話せない話なのでござるが、命を救ってもらった恩が優先。すべて
を話すでござる」

 (というより、私たちが(クレスが)助けなくても自力でどうにかなったんじゃないのかしら・・)

 フォルはその疑問を視線でクレスに問う。視線に気づいたクレスはとい    うと・・・

 (うん、今日の昼ご飯はあきらめよう)

 全く通じていなかった。



 作者の空です。
 途中でクレスの村について出てきましたが、
 彼の過去については特別編で触れたいと思い
 ます(トクベツヘンハホントニデルノカ
 最近は小説を書くことに喜びを覚え、高校の
 授業中にもコツコツと内職してます(ヤメレ
 感想などはhop_step_1220@hotmail.comまで
 送っていただけると幸いデス。