・・・いつか人は死ぬ・・

それは分かっていた・・・。

ある程度の年月が立てば寿命と言う名の終わりが訪れる。

だからそれまで人は精一杯生きる。

・・・でも父さんも母さんも僕を護るために死んだ・・。

その命を精一杯使うことなく僕のために・・・。
・・・・・・・・・・


「ん、またあの時の事考えてたら寝ちまったらしいな」

金色の髪を邪魔そうに払いのけ青年は独り言を呟きベッドから起きる。

青年は顔立ちもよく、何処ぞの貴族を思わせる。

「ふぁぁ〜あ、顔洗って狩りにでも行くか・・」

青年の言う”狩り”とはリボー暦160年〜から忽然と現れ始めた

”シスト”という魔物の討伐の事を指す。(現在リボー暦200年

160年〜シストの数は人の約100分の1程度だったが

年々その数は増し、今では人より多く世界中に息づいている。

シストの種類もピンからキリまであるが上級のシストともなると

王国の親衛隊一隊でも殲滅できない強さを持つ。さらに上級シストは

単体ではなく中級、下級シストと群れて行動するため人間側もかなり慎重に

行動しなければならない。

その強大な力のため今まで26あった国は今では12以下まで減少している。

その強大な力に対抗すべく、国は腕に自信があるものを一般民から集め、

傭兵団を結成した。傭兵団には家族や恋人、大切な人を護るという意思を持つ

若者が多い。その為今では城下町には老人や女・子供しかいない。

この青年も傭兵団にブラスタ国の傭兵団に所属している。

青年はタオルを持ち傭兵団砦の近くにある小川へと歩を進める。

ちょうどその時オレンジ色の髪を靡かせ一人の少女が勢い良く青年の背中に

蹴りをかませる。

「ちょっとクレス!何でさっきから無視すんのよ?!」

「イテテ・・、何だよフォル・・」

「何だよフォル・・、じゃなーい!無視は精神的にきついのよ!」

フォルと呼ばれた少女は無視されたのが相当気に食わなかったのか

顔を赤くして叫んでいる。

「大体レディに対しての礼儀がなってないのよあなたは!」

「ハィハィ、分かりました。で何の用だよ?」

クレスはフォルの怒りを軽く流した。

「もぅ、ホントに分かってるんだか・・・。まぁいいわ、で私が伝えたかったのは

今日の狩りは東の”クルックの森”の”グランスライオン”の討伐ってことょ」

「あいたた、急にお腹が痛くなってきた、悪いけど今日俺休むわ」

クレスはワザとらしくお腹を押さえ、その場に屈みこむ。

「はぁ?腹痛なんて正○丸のんどきゃ治るわょ。大体あなたが休んだら誰が変わりに

先制をかけるの?」

「って俺が先制かけるのかょ!?」

「当たり前じゃない!スピードスターと呼ばれるあなた以外には無理よ」

「・・・。お前よく考えて見ろ、相手は上級シスト:グランスライオンなんだぞ。下
手すりゃ
死ぬって( ̄Д ̄;;」
「ぁ〜らたかがライオン一匹が怖くて?」

「!たかがライオン一匹て・・」

口をへの字に曲げあきれたクレスの表情は周りから見れば面白いの一言に限る。

「ト・ニ・カ・ク!絶対参加しなきゃ駄目よ。あんたがいなきゃ何人死ぬかわかった
もんじゃない」

ため息交じりのフォルはそのまま砦に戻っていく。

残されたクレスは

「あの女俺を傭兵団の盾にするきか!(`Д´) 」

クレスの雄叫びは朝焼けの空に空しく響いた・・・。



それから顔を洗い自室に戻ろうとしたクレスは唖然とした。

唖然とした理由、それは彼の目先の男にある。

その男は気持ち悪いくらいにこやかにクレスに近づいてきた。

「おはようクレス君。今日はグランスライオンを討伐するんだって?」

「へ、へへへ陛下!」

クレスは裏返った声で小さな悲鳴を上げた。それもそのはず今、彼の前に立っている
のは
ブラスタ国の王、ブラスタ二世である。

「とりあえず落ち着きなさい。そんなに緊張しなくてもヨロシ」

「陛下、ナニヲしにここへ?」

とりあえず平静を取り戻したクレスは瞬間的によぎった言葉を吐き出す。

「ぅむ、今日のグランスライオン討伐についてなんだが・・」

(ちっ、またライオンさんのお話しかい)
クレスは内心で舌打をした。

「実は先日のカース討伐で兵をかなり失ってな・・。」

(だから何だよ)

「グランスライオン討伐は君とフォル君の二人で行ってもらう事にした」

「!!?殺す気ですか!」

瞬間的にクレスは反論する。

「スピードスターと呼ばれる君なら何の問題もないだろう」

「ぃゃぃゃ、問題大有りですって!」

「まぁそういう事だから頑張りたまえ」

王はクレスの意思を完全に無視してそそくさと消えてしまった。

「あの髭オヤジ!俺に死ねっていうのか!?」

クレスは激しく王を罵倒しながら壁に蹴りヲ入れるが

もちろん足を押さえその場に蹲る。

「最近いいこと無いな・・」


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「くそっ、この草邪魔なんだょ!」

悪態をつきながらクルックの森を歩く青年、クレス=ミリオンは相当生い茂る

草木に参っていた。それもそのはず、このクルックの森の草木は大の大人をも

隠してしまいそうなほど高く、悠然とたたずんでいる。

「仕方ないでしょ。グランスライオンがここを縄張りにし始めてから誰も人が
通って無いんだから・・」

クレスの愚痴を軽く流す少女、フォル=レイナスは毅然とした態度で応じる。

「大体あの髭ジジイ”二人でライオン殺れ”って軽々しく言いやがって・・」

彼の言う”髭ジジイ”とはクレスとフォルの所属する傭兵団のTOPブラスタ国の王

の事である。傭兵団はシスト(魔物)討伐を目的とする隊で、そのほとんどが若者で形


されている。シストは下級〜上級まで多種多様、下級シストは凡人でも引けはとらな
いが

上級シストともなると王国親衛隊一隊が殲滅されてもおかしくない力を持つ。

そしてその上級シストにグランスライオンは属している。

「まぁまぁ、他のシスト討伐で人手も足りないし仕方ないわょ」

「ハァ、分かってるよ・・。でも二人ってのは流石にありえないだろ( ̄Д ̄;;」

「スピードスターと呼ばれるあなたなら問題ないわょ♪」

フォルの言うスピードスターとは今まで彼の戦いぶりを見てきた者が付けた呼び名で
ある。

「って俺が戦闘の主戦力かょ・・・・」

「まぁまぁ、死んだらちゃんとお骨は持って帰って上げるから」

「・・・」

縁起の悪い事をサラっというフォルにカチンときたのかクレスはしかめっ面で押し黙
る。

沈黙のなか、紛れも無い殺気が二人の周囲を包む。一気に空気は張り詰め、クレスと
フォルは

それぞれ獲物を取り出す。

キンっ・・、鞘から剣が抜き放たれる。クレスは相剣:双剣シルフを解き放ち、研ぎ
澄まされた

感覚で周囲の気配を伺う。抜かれた双剣は己の存在を見せ付けるかのごとく太陽の

ように輝いて見える。

それに対しフォルは魔力の形成を行い援護に備える。彼女の特技である魔法使えるも
のは世界中でも

ほんの一握りで、世界の自然を束ねる3大精霊の加護を受けたものである。

そのため、まだ17にも見た無い少女がその加護を受けれたのは奇跡としか言い様が
無い。

もちろんまだ完全には魔力の制御はできないが、それは年齢を考えると致し方ない事
ではある。

「そろそろね・・」

「下がれ!・・来る!」

クレスの忠告と同時にその体に無数の傷が生じ、血しぶきをあげさせる。見切れるス
ピードでは

ないがギリギリで致命傷を避けたクレスは勢いを殺しきれず上空に投げ出される。

その瞳に写るのは普通のライオン・・否、キマイラとしか言い様の無い悪魔の使者
だ。

体は緑。背中には翼が生え、その牙はゆうに1mを超えている。

たった今クレスを切りつけた爪はすべてを切り裂く獰猛さを秘めている。

この獣こそが上級シスト:グランスライオン、今回の二人の討伐相手だ。

「チィ!」

軽く舌打ちをしたクレスは空中で体勢を立て直し、連続した突きを入れる・・・、が
 しかし

不安定な空中での突きは如何せんパワーとスピードが足りない。そのため攻撃はあっ
さりとかわされる。

「糞、ナンツーパワーとスピードだょ」

爪と牙の攻撃を捌きながら愚痴を溢すクレス。

「フンッ、何言ってるのよ。さっきから本気だして無いじゃない。そんなに死にたい
の?」

「(何にもヤッテ無い奴が良く言うぜ)ボソ」

「何か言った?」

「ヒィ!!(゜ロ゜ノ)ノ何も言ってませんが」

「なら良いわ」

命を賭しての戦闘の最中の二人の会話には誰が見てもあきれるだろう。

「ふぅ・・、とにかくあなたは斬る事だけを考えて。私が援護するわ」

「ケッ、分かったよ」

その言葉と同時にクレスは金色の風と化し、数十メートルあったグランスライオンと
の間合いは

一気に縮まる。確かにこの速さなら”スピードスター”と呼ばれてもおかしくない。


常人から見れば彼は霞むように見えるだろう。

しかし彼の動きにグランスライオンの動体視力は追いついていた。繰り出されるすべ
ての突きを

爪で弾き返し、翼をはためかせ、クレスの体は後方に吹き飛ばされる。

常人ならここで死んでいてもおかしくないし、生きていたとしても致命傷を負ってい
たはずだ。

しかしクレスは自らの体を後方へと力を押しやる事により、勢いを殺してダメージを


最小限に食い止める。

(さぁて、ソロソロ本気だすか・・)

今のが本気ではないのかクレスは心の中で呟き、体を起こす。そしてまた一陣の風と
なる。

一陣の金色の風は真っ直ぐグランスライオンに進む。もちろんそのまま進めば先の二
の舞になる

わけだが、今度は脚の動きを不規則に変化させる。

その動きによって体があたかも分身したかのように見せる”殺”という高等足捌き
だ。

そのまま殺を維持し、間合いを0にする。

「くらえっ!突風波!!」

掛け声と同時に双剣:シルフは更に輝きを増す。そしてそのまま勢いよく一点に
ポイントを絞り

力重視の集中攻撃を仕掛ける。

グランスライオンはその攻撃を爪で受け止めようとするが神速で繰り出された攻撃に
より

その爪は破壊される。しかしグランスライオンはスグに体勢を立て直し空中へと飛び
上がる。

そしてありったけの力で翼をはためかせ真空の刃をクレスへと放つ。

急に空中へ飛ばれ体勢を崩したクレスにはそれをよける事ができない。

(ぁ、ちょっとヤバイかも)

死の一歩前でもクレスは’ちょっとヤバイ’で済ませたのだった。


作者の空です。
正直中途半端でスマンですorz
ぇ、フォルが何もやってない?
気のですよ、気のせい(ぉ
まぁフォルサンは3話あたりからナンカスルハズデス(ヲ
さぁてスキルと3話の戦闘を考えながら今日は終わりますか。
感想などはhop_step_1220@hotmail.comまで送っていただけると
かなり嬉しいですw
それではまた〜。