「……斑?」

 

真菜ちゃんの家の前。

 

真菜ちゃんの……痕跡の前に居る斑は様子がおかしかった。

 

……微笑んだのだ。

 

一瞬だけ無表情に浮かんだ唇を吊り上げるだけの笑み。

 

(コロサレル)

 

それを見ただけでそう頭に浮かんだ。

 

それは嫌悪とも恐怖とも違う。

 

……ただの事実。

 

「………………」

 

斑は私を一瞬だけ見た後……帰路へと着いた。

 

静かに……この上なく確かな足取りで。

 

………………

…………

……

 

(さあ……俺に視せろ)

 

何が起きるか。

 

俺がどうすべきか。

 

……それを視る。

 

それが俺の能力『先視』だからだ。

 

完璧に近い未来予知。

 

(……視えた)

 

俺は家とは反対方向に走っている。

 

だから……俺は家へ向かう。

 

『能力』が俺を生かそうと……危険から遠ざけようとするならば……それに逆らう。

 

ズキリ

 

頭痛。

 

能力に逆らう反作用。

 

だが今は……

 

(コレデスラココチヨイ)

 

……急ごう。

 

俺が壊れるか……元に戻る前に。

 

………………

…………

……

 

天翔家の近所に公園が在る。

 

小さな公園……ブロック塀に囲まれたそこには普段から子供の姿が無い。

 

だが……小さなブランコに小さな少女が座っていた。

 

少女は最近、引っ越して来た。

 

友達は無く兄弟も無い。

 

親は愛してくれたがそれだけで、共働きの両親は遅くまで帰らなかった。

 

故に独り。

 

孤独。

 

愛を親を友を知るが故にその孤独は辛い。

 

「……見慣れない顔だな」

 

いつの間にか少年が一人。

 

少女の前に立っているというのに言葉を発するまで気付かない。

 

少女が見ていなかったのか少年が消えていたのか。

 

「そこ、結構気に入ってるんだ」

 

そう言ってブランコを指差す少年。

 

ごめんなさい

 

そして立ち去ろうとする少女。

 

「良いよ別に。ブランコが好きなんじゃなくて、そこから見える夕日が好きなだけだし」

 

少女を押し留める少年。

 

「けど悪いと思うなら……一つ頼みを聞いてくれ」

 

「……なに?」

 

少年は悪戯する時のように微笑む。

 

「友達になってくれ」

 

………………

…………

……

 

……公園。

 

そこに……『魔』が居た。

 

「……あ、せいぱい♪」

 

ブランコに乗って……彼女の顔と……声で。

 

「そうか……取り込んだのか……」

 

「……違いますよ?」

 

彼女は……彼女の顔をした魔は屈託無く笑う。

 

「私が取り込んだんです」

 

「……」

 

「私の能力覚えてます? 『同調』、まさか魔にも効くなんてビックリです」

 

クスクスクス

 

「普段は結衣先輩の能力と同調して手伝うだけでしたけど……

『蛭』に取り込まれそうになった時に試したんです。同調……能力のコピーが可能かどうか」

 

「……へえ」

 

「で、私が逆に蛭を取り込みました♪」

 

彼女は……とても楽しそうに笑う。

 

「それでですね……私分かったんです」

 

「……」

 

「自分から行動しないとダメなんです」

 

「…………」

 

「欲しいものは力尽くでも手に入れないと」

 

「………………」

 

「先輩気付いてなかったでしょうけど……私、先輩が好きなんですよ?」

 

「……へえ」

 

「あ、軽く流して……傷付くなあ」

 

クスクスクス

 

「だから……」

 

ズル……

 

「先輩」

 

ズルゥ……

 

「私の」

 

ズ……ル……

 

「ものになってぇっ!」

 

ギュオオオォォオオオッ!

 

彼女の……異形と化した右手が迫り来る!

 

ゴスゥ!

 

……右手は斑の左側すれすれを通り地面に突き刺さる。

 

「右手、まだ元の形に出来ないんです」

 

ニコリ、と笑う。

 

「先輩どうします? 私のものになるか……私に取り込まれるか」

 

………………

…………

……

 

「……トモダチ?」

 

「そう。オレと……そこに隠れてるヤツと」

 

……公園の入り口には一人の少女。

 

「え……わたし……」

 

「オレは天翔 斑、であっちが國頭 結衣」

 

「……わたし……柊……真菜」

 

「ヨロシク」

 

差し出される手。

 

「……あの……その……よ、よろしく……」

 

それが……出会い。

 

………………

…………

……

 

……クッ、

 

「クックッ……アッハッハッハッハッ!」

 

「?」

 

笑う少年、傾げる少女。

 

「ククク……やっぱり……」

 

哄笑。

 

実に楽しげ。

 

「魔だよ……オマエ」

 

哄笑。

 

とても楽しげ。

 

「……死ね」

 

哄笑。

 

そして……疾る(はしる)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

ゼロ「前回が長かったので今回は短めで」

 

真菜「クスクス、どうも」

 

ゼロ「出たな悪女」

 

真菜「違うもん」

 

ゼロ「一部の期待を裏切りおって」

 

真菜「一部は期待通りでしょ?」

 

ゼロ「知るか」

 

 

 

柊 真菜(ひいらぎ まな)

 

武器 無し

 

能力 同調

 

外見 茶髪のボブショート。

    子供っぽい。

    変化中?

 

性格 大人しく引っ込み思案。

 

一言 「フフフ……せぇ〜んぱい♪」

 

 

 

評価 (注:人間時)

 

筋力 D 耐久力 D 敏捷度 D 精神力 E(B) 魔力 B 能力 C 武器 E 技能 C

 

 

 

ゼロ「ついでじゃー」

 

 

 

天翔 斑

 

筋力 B(A) 耐久力 B 敏捷度 B(A) 精神力 C 魔力 D 能力 C(B) 武器 S 技能 S

 

 

 

國頭 結衣

 

筋力 D 耐久力 D 敏捷度 D 精神力 D 魔力 A 能力 C 武器 E 技能 E

 

 

 

御森 玖央

 

筋力 C(A) 耐久力 C(A) 敏捷度 A(S) 精神力 A(S) 魔力 E 能力 A(S) 武器 C 技能 B

 

 

 

新堂 美影

 

筋力 B 耐久力 C 敏捷度 B(A) 精神力 C(E) 魔力 D 能力 C 武器 A 技能 B

 

 

 

真菜「何? 数値の括弧」

 

ゼロ「(S)←これね。これは一時的に能力をこのレベルまで変えられるという事」

 

真菜「ふーん」

 

ゼロ「火事場の馬鹿力みたいなやつだね。能力で引き出す奴もいる」