「それじゃあ、また明日ね」

 

言って結衣先輩は帰って行く。

 

私――柊 真菜――は先輩達とは家が離れている。

 

ここからでは丁度反対方向になる。

 

だから結衣先輩と先輩……斑先輩の二人が歩いていくのを見送る事になる。

 

……正直、辛い。

 

私は斑先輩が好きだ。

 

しかも初恋でもある。

 

けど……それは結衣先輩も同じ。

 

紛れも無く私の恋の最強の障害だ。

 

……勝ち目が無い程の。

 

……辛い。

 

…………さっきの先輩はカッコ良かった。

 

殆どの『魔』は玖央先輩と美影先輩が倒したけど……一体だけ居た『蛭』は先輩が狩った。

 

その動きは無駄がなくとても綺麗で……

 

……欲しいとさえ思った。

 

先輩を私だけのモノに……

 

「……なに考えてるんだろ……私」

 

帰ろう。

 

家に帰ってお風呂に入って寝よう。

 

………………グシャ!

 

「…………え?」

 

なんだろう……お腹が痛い。

 

穴でも開いたみたい……

 

「……って、開いてるや。穴。」

 

右の脇腹の部分がごっそり無くなってる。

 

ああ、これは痛い。

 

ほんとに死んじゃうくらい痛いや……

 

グシャ、グシャ、グチャ、ゴシャ、ゴリュ、グチャグチャ………………

 

………………

…………

……

 

「ふう」

 

お風呂に入って一息吐く。

 

私――國頭 結衣――は直接戦闘に参加していないけど……結界を張るだけでも結構体力を使うのだ。

 

(……斑、強かったなぁ……)

 

彼が強いのは知っていたつもりだったけど……想像していたのとは強さのベクトルが違った。

 

極限まで洗練された無駄の無い……無雑作とさえとれる動き。

 

(もう綺麗とさえ言えるよね)

 

……なんだか、私と斑だと釣り合わない気が……

 

「お嬢様」

 

「うわっ! ……ご、後藤さん……脅かさないでよ……」

 

「能力者の長たるもの。常に周囲に気を配りませんと」

 

「だからって……わざわざ気配消して忍び寄らなくても」

 

「……癖です」

 

言って家の家政婦長の(家ってお金持ちなのかも)後藤さんはニヤリと笑った。

 

外見だと二十代後半の美人なんだけど……なんか十年以上前からあんな感じだった気がする。

 

以前訊ねたら「お知りになりたいのですか(ニヤリ)」

 

……即効で取り消しました。

 

「それはそうと、山田様よりお電話が」

 

「……山田?」

 

「……能力者以外の護国陣メンバーくらい覚えて下さい」

 

ああ、そうだそうだ。

 

いくら能力者が強くても何でもかんでも出来る訳じゃない。

 

そういう私達には出来ない部分をサポートしてくれる一般人が護国陣には多数居るのだ。

 

「……で、電話は?」

 

「こちらに」

 

言ってコードレスの子機を取り出す後藤さん。

 

……何処から?

 

まあ、兎に角。保留ボタンを押して音楽を止める。

 

「はい。結衣です。代わりました」

 

「ああ! 結衣ちゃんかい!? 大変なんだよ!」

 

電話の向こうからは切羽詰った中年男性の声。

 

「……何があったんです?」

 

「それが……真菜ちゃんが……」

 

……私は暫く動く事を忘れた。

 

………………

…………

……

 

俺――天翔 斑――は家に帰ると日課を済まし汗を流す。

 

風呂から出ると紅がバニーガールの格好をしてやがった。

 

「どうやって手に入れた?」と訊ねると「斑の部屋の隣の部屋にあった」との答えが返ってきた。

 

……あの女……いつかぶっ殺す。

 

と、固く適当に心に誓い就寝。

 

……………………ブオォォォォォオオォォォォォォオオオオォッ!

 

キキィーッ!

 

ダンダンダンッ!

 

「斑っ! オレだ玖央だっ! 緊急事態だ起きろっ!」

 

ダンダンダンッ!

 

(煩い、俺は眠い……むしろ寝てる)

 

ダンダンダンダンダンッ!

 

「……ねえ、斑。おきゃくさんだよ?」

 

(客と言うほど上等でもない)

 

「ねえ〜……あ、起きないなら『れいぷ』ってのをしても……」

 

「起きる」

 

即決。

 

無理矢理童貞を奪われる趣味は無い。

 

仕方なく玄関に向かう。

 

ガラ

 

「煩いぞ玖央。時間を考えろ……大体バイクも近所迷惑……」

 

「落ち着いて聞け」

 

俺の言葉を無視する形で言ってくる玖央。

 

……顔付きが何時になくマジだ。

 

「真菜ちゃんが……やられた」

 

「……何処だ?」

 

「彼女の家の前……」

 

ダッ!

 

「待てっ! 乗ってけ!」

 

………………

…………

……

 

 

あか、紅、朱、

 

あかあかあかあかあか

 

彼女の家の前に散乱する布と

 

布は彼女の着ていた服だ。

 

だからこのは彼女のだ。

 

確かこのはヘモグロビンの色だったか。

 

「……なんで……真菜ちゃんが」

 

俺の横で結衣が泣いている。

 

「いつか……誰かがこうなるとは思っていたけどよ……」

 

玖央はを噛み締めている。

 

「だが……それなら彼女じゃなくとも良いだろう! 魔を狩っているのは私や玖央だろうが……」

 

美影は……八つ当たりだ。

 

彼女は意外に予想外の事態に脆い。

 

……身体からこんなにが出れば人間は動かなくなる。

 

けど、ここにはその身体が無い。

 

……ああ、そうか。魔が喰ったんだ。

 

だから残ってるのはたくさんのだけ。

 

(……だからどうした? 自分には関係無い)

 

そう、関係無い。

 

(自分さえ無事なら良いんだ)

 

そう、良いんだ。

 

(さあ、帰って寝よう。睡眠不足は身体に悪影響を与える)

 

そう……

 

「………………ざけんな」

 

彼女が殺された。そう、殺された。

 

魔が殺して喰った。

 

俺の後輩を、友達を、妹みたいな彼女を。

 

(下手にコロス復讐なコロスんて考コロスえたら死コロスぬ。危コロス険な事はせコロスず帰ろう)

 

殺す。ころす。コロス。

 

コロス殺すコロスころす殺す殺す殺すコロスころすころすコロスコロスコロス殺す殺すコロス殺すコロスころす殺す殺す殺すコロスころすころすコロスコロスコロス殺す殺すコロス殺すコロスころす殺す殺す殺すコロスころすころすコロスコロスコロス殺す殺すコロス殺すコロスころす殺す殺す殺すコロスころすころすコロスコロスコロス殺す殺すコロス殺すコロスころす殺す殺す殺すコロスころすころすコロスコロスコロス殺す殺す

 

殺す。彼女をこんな目に合わせたヤツをコロス。

 

簡単にはころさない。

 

彼女が味わったであろう苦痛と恐怖を上回るモノを与えてやる。

 

ああ、それはきっと楽しい。甘美だ。

 

(危険だ。ヤメ……)

 

煩い。黙れ。理性なんて必要無い。

 

殺されたからコロス。

 

とても自然な事だ。ただの復讐。

 

相手も抵抗するかもしれない。いや、するだろう。

 

……それもいい。

 

さあ……殺し合おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

ゼロ「本当は真菜ちゃんをゲストで呼びたかったのですが

……彼女はエラい目に合ってるので、代わりに出番の微妙に少ないこの方に来ていただきました」

 

紅「どーもー……って、なにげにひどい言われよう?」

 

ゼロ「客観的な事実です」

 

紅「バカにされてる気がするー」

 

ゼロ「(してます)そもそも言いたい事ある?」

 

紅「んーと……斑とのラブラブなシーンを」

 

ゼロ「却下です。ていうかしてねえ」

 

紅「うわオニだこのさくしゃ」

 

ゼロ「そりゃお前だ。この人外魔境め」

 

紅「ところで今回の斑はなんかちがうね」

 

ゼロ「キレてます。最近の若者ですな」

 

紅「それはちがうとおもうー」

 

 

 

紅(くれない)

 

武器 無し(素手)

 

能力 無し

 

外見 二十代前半(あくまで外見年齢)。

赤髪の長髪。

大人びた魅力の美人。

 

性格 子供っぽい……が成長は早い。

 

一言 「んと……早くりっぱな『れでぃー』になりたいです」

 

 

 

評価

 

筋力 S 耐久力 S 敏捷度 A 精神力 A 魔力 A 能力 E 武器 E 技能 D

 

 

 

紅「って、なんかふえてるよー?」

 

ゼロ「唐突な気紛れとお前の出番の少なさを憐れに思ったのとで追加してみた」

 

紅「……なに、これ?」

 

ゼロ「各キャラの能力だ。いずれは他のキャラも追加する」

 

紅「……けどわけわかんないよ」

 

ゼロ「説明しよう」

 

 

筋力(肉体の総合的なパワーである)

 

S 最高評価、というか人間では先ず不可能な位。

A 人間としては最高位。

B 能力者としては上級。

C 普通の能力者。

D 鍛えれば一般人も簡単に辿り着ける位。

E 一般人。

 

 

耐久力(タフさ。防御力と体力を併せたみたいな感じ)

 

S 最高評価、というか人間では先ず不可能な位。

A 人間としては最高位。

B 能力者としては上級。

C 普通の能力者。

D 鍛えれば一般人も簡単に辿り着ける位。

E 一般ピープル。

 

敏捷度(つーか素早さ)

 

S 最高評価、というか人間では先ず不可能な位。

A 人間としては最高位。

B 能力者としては上級。

C 普通の能力者。

D 鍛えれば一般人も簡単に辿り着ける位。

E 一般(以下略)

 

精神力(ハート。つーか魂の強さ)

 

S 最高評価、というか人間という域を既に超えている。

A 人間としては最高位。非常に強靭。

B 人間としては上級。

C 一般に意思が強い程度。

D 普通。

E 意思が弱い。

 

魔力(魔術を使う力)

 

S 魔術師を超えている、使えない魔術は先ず無い。

A 魔術師としてはほぼ最高位。

B 上級魔術師。

C 魔術師。

D 素質が有る程度。

E 一般人。

 

能力(自分の能力をどれだけ使いこなせているか)

 

S 究極なまでに能力を極めた者。

A 能力を活かし切れている者。

B 能力を使いこなせる者。

C 能力に慣れている。

D 能力者としては未熟。

E そもそも能力が無い。

 

武器(持っている武器の評価)

 

S 何らかの特殊な力を秘めた武器。

A 良質な武器。

B 殺傷能力の高い武器。

C 武器として充分に機能している。

D 無いよりマシ程度。

E そもそも武器が無い。

 

技能(戦闘の巧みさ)

 

S 無傷にて常勝。

A 達人。

B 戦い慣れしている。

C 冷静。

D 暴れるだけ。

E 非常にお粗末。

 

ゼロ「こんなとこだ」

 

紅「……なに『まりょく』って?」

 

ゼロ「まんまだ。……使われるかは未定」

 

紅「うわ〜」

 

ゼロ「……つーかこうして見るとお前の能力メチャ高いな……流石、鬼」

 

紅「んじゃー わたしもせんとうに出して〜」

 

ゼロ「まー その内に。……今出すとバランスが壊れる」

 

紅「んじゃあそれまで出番なし?」

 

ゼロ「かも(鬼)」