「ああ〜っ! なんで斑は来てくれないのよっ!?」

 

私、國頭 結衣は限りなく唐変木の幼馴染、天翔 斑の事で怒っていた。

 

「おお、落ち着いて下さい、國頭せんぱい〜」

 

目の前には一年下の後輩、柊 真菜(ひいらぎ まな)ちゃんが居る。

 

私より若干短い髪の可愛らしい……例えるなら小動物のような子だ。

 

思わずギュッと抱き締めたくなる。

 

「へ、へんぱい〜(せ、せんぱい〜)」

 

……あ、やっちゃってた。

 

「別にあんな奴など必要無いだろう。私達だけで十分だ」

 

私から真菜ちゃんを引っぺがして(チッ)意見しているのは新堂 美影(しんどう みかげ)さん。

 

同級生だけどクラスは違うから斑とはあまり親しくない……というよりは嫌っている節さえある。

 

彼女は家が武家だったからか自他共に厳しい人だ。

 

能力者なのに戦わない斑を腰抜けと公言している。

 

うーん、外見だけなら艶やかな黒髪をポニーテールしている彼女はとても美人なんだけど……

 

……もうちょっと性格が丸くなってくれると私としては嬉しい。

 

「結衣は色気がねえからな〜 斑だって来る気も失せるぜ」

 

……そして少し離れた場所で携帯ゲームで遊んでいるのが御森 玖央(みもり くおう)。

 

最近の少年マンガの主人公みたいに金髪(もちろん脱色している)のツンツン尖がった髪型をしている。

 

このメンバー唯一の男なんだけど……今、凄い酷い事言われた気がする。

 

……てい。

 

「おおっ!?

どこからとも無く飛んできた石飛礫がオレのGBAを直撃!? SPに買い換えたばっかなんだぞ!」

 

無視無視。

 

「さてと……今日の綻びは……」

 

私達の住んでいるこの町、刻門町は丸々が『鬼門』になっている。

 

けど普段は結界によって鬼門は閉じている……んだけど……

 

鬼門の中だか向こうだかに居る『魔』達はその結界を破っては出てくる。

 

私達『護国陣』は『魔』達が作った結界の『綻び』を修復しつつ出てきた『魔』を退治しているのだ。

 

「……ん〜……西側が壊れかかってるかな?」

 

特に私の家系は結界を張ったり綻びを発見するのに特化している。

 

私もその例に漏れず結界』の能力者だ。

 

護国陣は代々結界』の能力者が統べる事になってるから私はこの町の護国陣のリーダーなの。

 

あ、実は護国陣ってこの町だけじゃなくて日本全国各地に存在してるんだ。

 

『鬼門ある所 護国陣あり』だとか。

 

それでも一般に知られていないって凄いよね〜 秘密の組織って感じ(そのまんまだけど)。

 

「それじゃあ急ごう。魔が出てくるまでに綻びを修復しといた方が良い」

 

言ってスタスタと一人で行っちゃう美影さん。

 

「あ、待って。ほら、真菜ちゃんも」

 

「あ、は、はいぃ〜」

 

「ぬおーっ! カートリッジにヒビがーっ!」

 

後ろから悲鳴が聞こえる……

 

……女の子をバカにするのがいけないのだ(笑)

 

………………

…………

……

 

……視界いっぱいに広がる赤。

 

それはゆらゆらと揺れながら高速で近付いてくる。

 

ビッターン!

 

完全に予測していた俺はあっさりとその襲撃をかわしていた。

 

……玄関前には赤い長髪の女が倒れている。

 

……さて。

 

「今日の夕飯はどうするか……」

 

無視を決め込み中に入ろうとする俺。

 

ハッシ

 

……服の裾を掴まれる。

 

「……なんだ?」

 

掴んでいるのは倒れていた女だ。

 

外見だけなら明らかに俺より年上に見える。

 

一見すれば妖艶な美女は開口一番こう言った。

 

「お肉が良い」

 

………………

…………

……

 

本日のメインディッシュはトンカツにした。

 

居候の意見を聞き入れつた寛容な判断の元の決定だ。

 

……まあ、別に何でも良かっただけだが……

 

「ごちそーさまぁ♪」

 

食卓の向かいには前述の居候……紅(くれない)が居る。

 

外見年齢は大体二十代前半。

 

実年齢は……一歳にも満たないだろう。

 

……一応言っておくと紅は人間ではない。「鬼」である。

 

「鬼」とは「魔」の一種で人間に近い形状をした存在を指す。

 

もっとも、一般の想像する鬼と紅の容姿は全然違う。

 

角や牙は無いし肉体的には女だし、あまつさえトラ柄のビキニなんて着ていない。

 

外見だけなら完全に人間である。

 

……しかし、その成長力は人間より遥かに優れている。

 

今も相変わらず言動は子供だが最初に拾った時は赤ん坊同然だった。

 

もっとも外見は今と同じだったが……しかも全裸。

 

以来、何だかんだで育てている……勿論秘密でだ。

 

「鬼」を飼ってるなんて知れたらコイツだけでなく俺の命も危うい。

 

『紅』という名前はコイツの髪からとって付けた。

 

別に赤でも朱でも良かったが……一応は女だからそれっぽいのを選んだ。

 

しかし……なんでこんな無駄な事をしているんだ、俺?

 

「はん、はんーっ!」

 

「……なんだ?」

 

「『子作り』ってどうやるの?」

 

真顔で凄い質問をする紅。

 

「……二階の書庫の左から三番目の本棚の上から一段目、左から五番目」

 

「わかったー」

 

トテトテと二階に上がって行く……

 

最近は本の場所を教えるだけで自分で調べる事が出来るようになった。

 

「……さて」

 

食器の片付けだ。

 

………………

…………

……

 

既に予想出来ていると思うが俺は一人暮らしだ(アレはペットだ)。

 

親は既に他界、兄と姉が一人ずつ居るが現在は他の町に行っている。

 

まあ、お陰で静かに暮らせている。

 

自分の部屋でコーヒー(豆から淹れた本格派)を飲みながら読書をする。

 

…………………………!

 

「クッ……!?」

 

……嫌な物が視えた。

 

「チッ……俺とした事が……」

 

懐からケースを取り出す……中は……眼鏡だ。

 

「掛け忘れるとは……」

 

今更ではあるが掛けておく。

 

……視えてしまった以上は仕方ない。

 

壁に掛けてある革のジャケットを着込み家を後にする。

 

「なんて……面倒な……」

 

………………

…………

……

 

「で、ここいらなん?」

 

壊れたゲームをあっさり諦め飄々と付いて来る玖央。

 

「うん。結界がかなり緩くなってる」

 

「はーん」

 

彼は足にローラーブレードとやらを履いていて移動が速い。

 

あっさりと私達を抜いていく。

 

「ところでどう? 俺の新たな愛機『イブシ銀スパイラル』は?」

 

くすんだ銀色をしたローラーブレードを見せ付けてくる。

 

「色塗り替えただけじゃん」

 

「その色が大事なのさ」

 

「だからって毎日塗り替えなくても……」

 

「昨日は『クリムゾンセーキ・リボルバー』でしたっけ?」

 

と、これは真菜ちゃん。

 

「一昨日は『ビリジアンウイング』だったか……」

 

こちらは美影さん。

 

「「「センス(なーい)」(ないです)」(ないな)」

 

微妙に合唱。

 

「ケッ、所詮女にはこのエレガントな趣味は分からんのさ」

 

言うに事欠いてエレガントかこの男は。

 

「あんねー……って、どしたの?」

 

いきなり玖央が警戒する。

 

「ニブイなあ……魔だよ、魔。……五体だ」

 

うわっ、もう出てきたかあ……にしても彼の感覚は毎度動物のようだね。

 

「せせせ、せんぱい〜」

 

「大丈夫よ真菜ちゃん」

 

怖がる後輩を宥めるのも大事な役目……ああもう、可愛いなあ……

 

「退いていろ、カミナリ頭」

 

「ふざけんな、そっちこそ二人でも護ってな」

 

って! おーいっ! 二人ともーっ! 喧嘩すんなよーっ!

 

「……」

 

「……」

 

数瞬睨み合う二人。

 

「ならば……」

 

「どっちが多く狩るか勝負だっ!」

 

一気に走って行く二人。

 

「せせせせせ、せんぱい〜」

 

ああ、真菜ちゃん泣きそう。

 

「ま、あの二人なら大丈夫。私達は結界直してよ?」

 

そう、いつもの事なんだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

ゼロ「紹介ばっかで微妙に進まない第二話です」

 

結衣「………………うん」

 

ゼロ「ど、どしたの?」

 

結衣「………………」

 

ゼロ「あー ……人見知りするんだっけ?」

 

結衣「うん」

 

ゼロ(俺作者だぞ……)

 

結衣「……もう行って良い?」

 

ゼロ「ああ、はいはいどーぞ。 ……なんでこんな癖が強いキャラばっか……」

 

 

 

國頭 結衣(こくとう ゆい)

 

武器 無し

 

能力 結界

 

外見 背丈は普通。

    茶色の肩まで届く髪をしている。

    特徴の無い美人。

 

性格 一途に斑を愛している。

    根は大人しく人見知りするがしっかりしようと常に頑張っている。

    可愛いものが好き。

 

一言「あの……特に無いです……あ、斑っ! どこ行ってたのよっ!?」