ズザンッ!

 

閃く銀光が不定形の『何か』を切り裂き溶解……否、消滅させる。

 

「……近頃……鬼門の緩みが酷い……」

 

その美しく凶悪な光は佇む青年が持つ短刀である。

 

……青年はこれと言った特徴がある訳ではない。

 

ただ、並より上の容姿をしており、そして……

 

 

――人形よりも表情が無かった――

 

 

「……この程度の緩みでは護国陣は反応出来ないのか」

 

誰に話すでもなく……そう、呟く。

 

時間は深夜である。そもそも誰かが居る筈も無い。

 

実際、青年の前には人外たる『モノ』しか居なかった……

 

その『モノ』は『蛭(ひる)』と呼ばれる。

 

『蛭』と呼称されてはいるが、『それ』は一般に知られる蛭ではない。

 

不定形の生物……否、生物かどうかでさえ怪しい『それ』は青年に飛び掛る。

 

ズザンッ!

 

機械的でいて機械では不可能な動きで青年は『それ』を切り裂く。

 

それだけでその不定形は溶解し……消失する。

 

それで青年は用が終わったのか帰路へと歩を進める。

 

……足音すら残さずに。

 

………………

…………

……

 

『鬼門』

 

それは人の世と冥界とを繋ぐ門とされる。

 

しかしそれは迷信の類であり、そのような物は存在しない。

 

……そう、しないと思われている。

 

そして存在し得ない筈の門は夜な夜な開く……人の世を滅ぼすべく。

 

だが、人はそれに対し無力では無かった……

 

冥界より来る魔のモノを払う力を持つ人間が生まれたのだ。

 

それは異端者、又の名を『能力者』と呼ばれ、人知れず人の世を護り続けてきた。

 

その能力者達の集団を『護国陣』と呼ぶ……

 

………………

…………

……

 

……ダーウィンの進化論

 

それはあまりに有名である。

 

曰く、『生物は環境に応じて変化(進化)していった者が残った』だとかなんとか。

 

……詰まる所はそういう事なんだろう。

 

『俺達』という存在も環境に応じる変化の果てという事か。

 

……だが、そんな事は別にどうでも良い事だ。

 

知って何になる訳でもなし……ただの暇潰しに過ぎない。

 

視線を動かし時計を見る。

 

分針は先程見た時とさして位置が変わっていない……

 

たかが十分やそこらが無為に長く感じる……

 

だから嫌いなんだ……この休み時間という時間は。

 

……だが級友達はこの時間が好きらしい。

 

話をしたり、携帯をいじったり……よく飽きないと思う。

 

……おそらく特異なのは俺の方なのだろうが……

 

「……ねえ、斑(はん)」

 

『天翔 斑(てんしょう はん)』、それが俺の名だ。

 

つまり今のは俺に対する呼び掛けだろう。

 

「なんだ?」

 

横を向けば極度に無防備な程近付く少女の顔……

 

「なにボーッとしてるの?」

 

彼女……『國頭 結衣(こくとう ゆい)』は俺に対する警戒を全くしない。

 

「ボーッとするに何も無いだろう」

 

「そりゃそうだけどさ……暇なら話でもしようよ」

 

結衣は客観的に見て美人と言える。

 

茶色がかった髪は首元まで伸びており、キチンと手入れされている。

 

基本的に大人しいが、表情はころころ変わり愛らしい。

 

我が組(クラス)では非公式のファンクラブもあるとかなんとか……

 

「別に話す事もない」

 

……故に俺の態度が彼等に恨まれるのだろうか……

 

「何だって良いじゃん。昨日のテレビとか……」

 

「テレビは見ない。目が悪くなる」

 

「って、どこのおじいちゃんですか君は」

 

「健康には若い内から気を使え」

 

「ごちゅーこくありがとう。……じゃあさ、護国陣だけど……」

 

キーンコーンカーンコーン……

 

まるで図ったように鳴る校鈴。

 

「時間だ。席に戻れ」

 

「あ……うん、じゃあ後で……」

 

名残惜しそうにこちらをチラチラ見ながら自分の席へと戻る結衣。

 

そうして授業が始まる。

 

ただ勉強すれば良い時間……それは俺にとってとても楽な時間だ……

 

………………

…………

……

 

「ねえ〜 斑ってばー 護国陣に入ってよ〜」

 

自転車を押しながら結衣が呼び掛けてくる。

 

時間は既に放課後になっている。

 

「断る。それとそんなに堂々と護国陣の名を出すな」

 

下校途中で周りには疎らだがまだ人が居る。

 

「誰も気にしないって。斑が居てくれるととっても助かるんだよ〜」

 

言いながら俺の腕にしがみ付く結衣。

 

「懐くな」

 

引き剥がす。

 

「良いじゃん、私達の仲なんだし」

 

「ただの幼馴染だ」

 

しかも家ぐるみの。

 

「幼馴染だよ? 最近じゃあ、恋愛マンガにだって使われ難い美味しい関係だよ?」

 

「ほう。それは良かったな」

 

俺は無視して歩を進め続ける。

 

「あぁ〜っ、もーっ! このとーへんぼくっ!」

 

「正しくは『唐変木』だ。意味は自分で調べろよ」

 

「知ってるわよんなもんっ!」

 

「そうか」

 

うぅ〜 と結衣が頬を膨らませる。

 

彼女は基本的に大人しいのだが俺の前では喜怒哀楽の表現が激しい。

 

「あ〜 もうっ! とにかく護国陣に入って! 人数不足なの知ってるでしょう?」

 

「知っているが……なにも俺じゃなくて良いだろう」

 

「そんなこと言ったって〜 身近な能力者は斑しか知らないんだよ〜」

 

「知らんな。自分で探せ」

 

まあ、結衣に見つかる能力者では高が知れるだろうが。

 

國頭の家はこの町の護国陣の長を務めている。

 

そして現当主はこの結衣だ。

 

近年、鬼門より現れる『魔』は減少傾向にあり、この結衣でもなんとか保てている。

 

「みんな、他の町の援護に行っちゃって……残ってるの私入れて四人だよ?」

 

「充分だ」

 

「ぜぇーったいに足りないっ!」

 

う〜〜〜っ! と睨んでくる……

 

「じゃあ、俺はこっちだから」

 

程よく分かれ道に着き帰路へと進む。

 

後ろから「はくじょーもん!」とか「ひもおとこ!」などと言われているがキッパリ無視した。

 

………………

…………

……

 

結衣と分かれて五分程歩き我が家へと到着した。

 

天翔の家は数百年前からある古い木造建築だ。

 

ともすれば国の文化遺産にされてもおかしくない。

 

……まあ、國頭の家の方が立派なのだが……

 

扉を開けて中へと入る。

 

……その時、視界いっぱいに『赤い』ものが見えた……

 

 

 

 

 

                                                                   

 

あとがき

 

ゼロ「作者と思わしき物体『ゼロ』です」

 

斑「一応、主役の天翔 斑です」

 

ゼロ「……なあ、これは『学園恋愛物』+『能力者戦闘物』だよな」

 

斑「そうだな」

 

ゼロ「ならもっとモテそうな性格しろやっ!」

 

斑「設定したのはお前だ」

 

ゼロ「アドリブ利かせるのが良いキャラクターだろうが!?」

 

斑「無茶を言うな」

 

ゼロ「くっ……えー、主役&作者が頼りにならないのでアイデア等がありましたらどんどん下さい」

 

斑「頼りにならんのはお前だけだと……」

 

ゼロ「(無視)キャラや能力、はたまたイベント等、なんでもござれで出来る限り使いますので」

 

斑「それだけの技量があるのか?」

 

ゼロ「(キッパリ無視)あと、今後はどんどん女の子出すつもりですが誰とくっつくのかは決めてません」

 

斑「ほう」

 

ゼロ「どのキャラとくっつけたいか、

てゆーかどのキャラが好きかメールとかすると作者の心はあっさり動きます」

 

斑「メールアドレスは『zeroandzekurosu@yahoo.co.jp』だ」

 

ゼロ「感想とかもくれると作業スピードが段違いにアップします」

 

斑「まあ、今後とも見捨てずに読み続けてやってくれ」

 

ゼロ「うむ、よろしく。……あ、ついでにお前のデータも載せるか」

 

 

 

天翔 斑(てんしょう はん)

 

武器 伝家の短刀『乖離』

 

能力 まだ秘密

 

外見 長身にてやや細身。

 髪は黒く肩まで無雑作に伸ばしている。

 総じて美形の無表情。

 

性格 極度に冷静で無駄を嫌う。

    何事も客観的に考える。

 

一言 「無い」